明日結局何人?

うちの駄犬を撫でてやった。 ドックフードばかりじゃかわいそうなのでビスケットの缶を開けてやった。 僕も朝から何も食べていない。 犬に2枚やり、残りの2枚を僕が食べ、缶はゴミ箱に捨てた。 湘南のネロとパトラッシュ。 の、ネロこと僕は、ルーベンスの絵を探して死ぬか、飲み会お誘いの電話をかけるくらいしか選択肢のない正月二日。 あけましておめでとうございます。
昨日飲んでいるとき、明日の飲み会の詳細を決めました。 夕方に集合し、飲み始める前にみんなで洋服屋へ行くことになりました。 なぜそういう流れになったのか酔っててあまり憶えていないんですけど、冷静に考えてみると男同士で「そのジーンズ似合うね」と言い合う年頃が28歳で適切かどうか疑問ではあります。 軽くこっぱずかしい絵です。 何か意義があってそういう決断を下したはずなので、明日はその辺を探りながら服も探そうと思います。 
 

ガビーンが似合う

顔文字絵文字にはじまり、写メールから動画まで、メールの表現方法が錯乱するなか、心の擬音語を文字にできる人が身近にいる。
こわもてのオッサンが顔文字を入力したところで、なんら違和感を憶えない昨今、受け取ったメールの『ガビーン』という表現に、一周回った新鮮さを感じた。 そして、もう一つ。 もはや漫画ですら使われない心理描写が、その送信者とマッチしていることも驚いた。
送信者が他の人間ならば、人格丸ごと疑うだろう『ガビーン』の文字も、なぜか彼の名の元に届けられたメールならばしっくり来るのである。
北海道出身とか、彼のひたむきさと不器用加減とか、いろいろ要因はあるんだろうけど、先日ついにその核心を掴めた。
『ガビーン』は心の音ではない。 彼は、驚けば口から「ガビーン」と発するのである。 『ドキッ!』『ぐふふ』『むふ』『ムッカー!』も、全部口から吐く言葉を文字にしている、彼にしてみれば普通の口語体だった。
ついでに加えると、カレギュウを食べ、満員電車に乗ったことを伝えるメール、『電車の中でもギュウギュウ』くらいのギャグは、臆することなく口に出せる強い人間だ。 
僕が彼にメールを返さないワケはまたいつか暇なときに記す。 

男旅1

「今日、何してました?」
三連休の初日だが、友人は出社した。 僕はというと、将棋チャンネルの『素人VS棋士ハンデ戦を腐った目で追っかけていただけの土曜日だった。  
「うーん。 タバコを買いに行ったかな〜」
「それだけっすか?」
「それだけ」

笑っていいともが見れる特別な日を『ハッピーマンデー』と呼ぶ彼と、犬の散歩を『予定』に加えてもスケジュール帳にスペースがあまる僕。 カレンダーの数字が黒くなるのを待つだけの三連休を避けたい二人は、「富士山よりむこう(西)がわに行ったことないんです」という、友人の希望をかなえるべくとりあえず車を走らせた。 夜の10時ともなると、三連休とはいえ車はまばらだ。
彼女がいないのはともかく、休みのあいだ一歩も家を出ないとなると人生の敗北者みたいな、そんな錯覚に襲われる。 が、深夜のファミレスで地図を広げている二人が、何かに勝利した姿には見えない。 
静岡県のようにも見えるが、長野、もしくは山梨? 道が一本かろうじて伸びている地点を指差す彼。 温泉マークに反応した僕はGOサインを出す。 『なんとなく西』から、的確なゴールを設定した二人は、車に戻り、また元のように「会社にいる可愛い子」の話を始めた。 
去年別れた彼女をいまだにひきずってる彼に、つまらない恋話をしゃべらせたら右に出るものはいない。 どれほど引きずっているのか、いまだに理解しきれない。 というのも、社内の女の子に片思いしているのもまた事実だからだ。 片思いすらさせてもらえないほど女っ気ないくせに、『好きな人に想いがまったく伝わらない』という悩みをからかっていた。 
何も生み出さない会話が2時間続き、対向車とすれ違えないような細い道をひたすら進み、目的地近くの空き地で眠りについた。 狭い車内、男と二人で寝るのは19のとき以来だった。


つづく

女子高生風

70人ワンフロアで働いている職場環境だと、ランチタイムに一人きりの男というのも社交性に欠けているように感じなくもない。 しかし女性のそれは数倍は増して近寄りがたさを匂わせる。 と、思う。 
社会人になって数年経つが、いまだかつて決まったグループにも属さず、ランチタイムに孤独を楽しむ女性を見たことが無い。 老いも若きもOLとは、ランチタイムを共にする人間の確保と維持に、日常業務並み、もしくはそれ以上に気を使っているんではないかと想像する。 
今の職場に移ってから、僕は決まった3人の男と昼ごはんを食べに行くようになった。先週の真ん中あたりのこと、その中の一人、年下の友人がランチタイム前にメールを送ってきた。 
「今日、一人でめし食いたい気分っす(笑)」
省略された第二フレーズ以降は、「目上の二人の人間は快く承諾してくれるでしょうか? ランチタイムが終わってもギクシャクせず、明日以降に響かないですよね?」とか、そんなことを意味してるのだろう。 『気分っす(笑)』という表現を現代文法のもと展開すると、おおむね間違ってはいないだろう。 
そこまでランチタイムに気を張る男。 ほんの少しだけ戸惑ったが、人の輪を大切にする男だと解釈して納得することにした。 
「一緒にトイレいこ♪」というメールが届いたら、もう少し深く考えることになるだろう。

未調査の女性

新しい職場で、ひとつ年下の友人ができた。 お互い彼女がいない、こっ恥ずかしい現状が二人の距離を縮め、ラケットを交える仲にまで成長した。 ラケットというのはしゃもじより一回り大きい、ピンポン球を打つやつを指す。 
金曜の夜21時@横浜、選択肢に「卓球」が存在する時点で、僕たちはウダツの上がらないドブネズミだ。 ドブネズミとはいえ、美しくなりたい二人はお互いのカードからハートを出し合い、異性を交えた会合を開こうと約束を交わした。 前向きに汚い足で進むことを誓ったフライデーナイト。  
最初は僕のツテで開いた。 男女計10人くらい、比もほぼ半々だった。 終電間際まで飲み、楽しかったですねと彼は言い、次は僕の番だと息をまいていた。 
それから数週後。 言葉を交わす間柄の保険のお姉さんと約束を取り付けました。 そんな朗報が彼から飛んできた。 飛んでくるというか、背中合わせで仕事をしているので肩越しに報告を受け、その労をねぎらった。 オフィスにやってくる保険レディの中で、唯一「飲む」対象だという。 
35歳で二児の母は僕の対象外だと伝えておくべきだった。 後悔しながら店を出たとき、金曜の夜が活気を帯びるには早すぎる時刻だった。 

黄色

今年一番暑い日曜、黄色いシャツを着た人たちが駅前を固めていた。 暑い時期に黄色いシャツで連想するのは、24時間テレビ関係者かブラジル代表だが、残念なことに目の前にいたのは前者だった。 テレビを見ていたのでポケットの100円玉を募金した。
「愛は地球を救う」の文字が募金箱に。 愛に飢えた男がキャバ嬢に貢ぐ方程式に代入すると、キャバ嬢のサービスに相当するものが山田花子の苦しい表情だったり、その他映像の数々だったりするわけだ。 
大方の日本人が同じスタンスで24時間を過ごすよう、チャンネル消去法の結果で見始め、そのときのプログラム次第では小一時間飲み込まれる。 
詳しい内容を全て省くが、とある『24時間的』理由で女子体操選手「コマネチ」が20年ぶりに人前で演技を披露しました。 妖精に例えられた演技と愛くるしい表情は、大人な女性を通り越し、エロ小説から飛び出したようなマダムのよう。 女子体操選手特有の小柄で細いラインというより、峰不二子のそれに近かった。
その巨乳の何割か、もしくはほとんど全て、が、シリコンのような気がしてしまい、最後まで彼女(のシリコン)を見つめ続けた結果、100円をあの箱に入れた。 自分でもどんな愛なんだか見当も付かないが、結果的に地球を救った日曜日だった。

[雑]システムさん 3

いまさらあれこれ言うのも女々しいのですが、『開発』にド素人を送り込む利点ってなんだろう。  
皆さんお忙しそうに動きまわるなか、その忙しさの何割かは僕らがマレーシアからオーダーしたものなんで、居心地も良くなく一日中ガムを噛んでます。
「自分らしくないなんて言うなんてあなたらしくない」
不意にラジオから聞こえた伊集院光の言葉が、槙原っぽくて面白かった。 
異空間というか亜空間で黙り込むのは、至って自分らしい。