02/04

海外だからハメが外せる。 そんな恥ずべき日本人になりつつある僕は、今日もカカトにローラーのついた靴で会社の廊下を滑っていた。 ホテルのロビーも、滑空中の飛行機のごとく車輪をうならせて滑り、ついに年下のオトナの人に怒られた。 
何のために、10代の大切な時期に渡米させたんだ。 両親に申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、思い返せば母親に自慢しながら、トランクにこの靴を詰め込んだ。 どうしようもない『トランク一つだけで』マレーシアまで飛んできてしまった気がするのは、思い過ごしであってほしい。
ローラー靴を履いていると、なぜか気持ちが安定してくる。 楽しい気持ちになる。 佐藤君に自慢しながら滑ったときの優越感を思うと、感慨深いものがある。 僕を追うようにマレーシアに辿り付き、疲れた目で見る『無邪気な僕』ほどいやな光景は無いだろう。 滑るほどに、僕を元気にしてくれる幸せの靴だ。 ドラクエの攻略本のイラストは、この靴が描かれていたのかもしれない。 
身近で暮しているからこそ感じる、西洋文化の吸収で生じる宗教との反発。 先進国である日本人が、彼らの心の隙間に潜り込み鋭く描写することなく、またどうでもいい日本人の独身男性の話で終わってしまった。