01/30 一時帰国中

日本とはカレギュウを食べられる、世界で唯一の国家である。
天皇は国の象徴であり、カレギュウ愛国心を一枚の皿で顕したハーモニーをいう。
日本に滞在する意義とは、何杯のカレギュウを食べるかにあり、滞在期間や出社日数は全くもって意味を成さない。 会議開始時間に目覚めた程度の遅刻なら、難なく仮病でカバーできたことが証明しているし、そもそも2日しか出社していない。
話は変わるが、天皇に苗字はない。 天皇天皇であり、隣の山田家が突然皇居に住むような交代劇はありえないからである。 
カレギュウにわざわざ「松屋の」と付けてしまう国民の多さたるや、日本人としての自覚が足りないゆえに起こる、恥ずべき現象だと僕は捉えている。 
さて、先日の遅めの昼食時のことだ。 カレギュウ以外のすべてのボタンを、松屋の食券機から取り除かれる日が一日でも早く訪れるべきだと思いながら、押すべきボタンを正確に押した。 数分後、目の前に出てきたカルビ定食に涙が込み上げてきそうになる。 僕は怒りに打ち震え、『いったいこの国はどうなってしまうのだろう』と、深い悲しみとともにこう言ったのである。
「オレ、カレギュウたのんだんだけど。」
半券を見直し、店員の表情がこわばった。
「ゴミンナサイ。シュミマセン。カリギュウイチョー! タイシキュウ!」

この国は、どうなっちまうんだろう。
一抹の不安を憶えた最後のカレギュウ。 
僕は、今夜マレーシアへ旅立つ。