01/13

アシモがやってくるんだ。」
オフィスの地階にある売店のオッサンが言った。
近所に来るんだったら、見に行こうかと思ったが遠くの街の話だった。 
藤川さんが、「でも、あれ、レンタルできるんだよ。借りれば?」と、返すと、
「新聞で見たよ。めちゃくちゃ高いんだろう。 借りれるんだったらとっくに借りて、ここで遊ばせとくよ。」 
狭い店内の床を指しながら笑った。 自閉気味の愛娘と愛息子が、人目をはばからずしゃがんで遊ぶ床だ。 
アシモのバージョンも上がり、ネズミを見て怖がってもおかしくないレベルに達してきた。
でも、言葉がペラペラなほど進化したところで、四次元ポケットの無いドラえもんとなると、使い道がかなり限られてくるような気もする。 
のび太の代わりに、母親に土下座して謝るアシモ。 みんなと一緒にジャイアンの歌を正座で聞くアシモ。空き地野球で透明ランナーに抜擢されたアシモ。懸命にゲッツー防止のスライディングするも、軟球が頭を直撃したアシモ。平謝りでカミナリさんからボールを受け取るアシモのび太、思春期に入り、コンビニでエロ本を買わされるアシモ。 
アシモ苦難の、のび太中高生時代。仕える人間の数が、小学校の頃の比ではない。買出しに行くも、渡された額が過不足で、駐車場でオロオロするアシモ。365日、休まず誰かしらのバイトでピンチヒッターのアシモ。ピザのトッピングはお手の物のアシモ。 新人に教えるアシモ。サラミの並べ方にこだわったアシモ。別のバイト先でスマイルをオーダーされ、自分なりの笑顔を浮かべたアシモ。クレーム対処に店長から一目置かれ、おばさんから子供まで、奇妙な客の相手はアシモ。 
三浪したのび太の代わりに父親に土下座するアシモのび太、やはりそういう道に進み、アイドル限定DVDボックスセットを徹夜で並んで勝ち取るアシモ。Yahooオークションをこまめにチェックさせられるアシモ。MXダウンロードリストをコンプリートするアシモ。 レア映像、レア音源の分野では神とあがめられ、アングラでは敬語を使われるほどファイルを抱えるアシモ。実は、影で月収100万のアシモ
ドラえもんほどじゃないけど、シュミレーションすると結構使えるような気がしてきた。 多分、いくつかの項目は今でもアシモ、できそうだし。 
 
あと、藤川さん、やっぱしアシモ、コンセントに繋がなくても動くよ。