03/05

目を合わせないで、距離を開けて通り抜ければ、ネコちゃん達は逃げません。 寝転がったまま、僕が横断歩道を渡るのを眺めます。 階段を照らす街灯と、5匹のネコちゃんは、いつもゆったりしているのですが、撫でようとして近寄ると逃げてしまいます。 逃げてしまうと僕は悲しいので、いつも気をつけながらこの階段を下りるのです。
買い物を済ませ、テイクアウトのビニール袋をぶら下げながら階段に差し掛かると、2匹のネコは相変わらずツツジの植木の中でジャレ合っていました。 他のネコは何処かへ出かけたようです。 道のはじっこを歩きましたが、2匹は僕に好奇心を示すことなく遊びに夢中でした。 それは、それでいいと思いました。 無視された寂しさは、ネコちゃんの楽しそうな姿が打ち消したからです。
階段の中腹を少しだけ抜けると、突然ビニール袋がガサガサと音を立てました。 思わず声を上げてしまいそうになりました。 街灯の光が弱くて気づきませんでしたが、ネコがジャレてビニール袋を引っかいています。 ゆっくりと腰をかがめ、ネコちゃんが座っている段に、僕も腰を下ろしました。
白に、黒と茶のブチのネコちゃんは、僕の顔が近づいても逃げませんでした。 親指の腹で眉間を撫でてやると、ビニール袋から僕の手に好奇心が移ったようで、頭をすり寄せ、ゴロゴロと咽を鳴らし、仰向けに寝転がりました。    
30分くらいネコちゃんとジャレ、その場を離れましたが、なんだか無償にセックスがしたくなりました。 最後にしたのが何時だか憶えていませんが、とりあえず僕には相手がいないので、ネコとジャレただけでも喜ばないといけないのかな。 謙虚な気持ちを持つことにして、セックスのことを忘れました。 
翌日から、二晩連夜でセックスの神様が下りてくるのですが、そのときの僕はネコを触っただけで満足なのでした。
 
つづく。
 
やっぱつづかない。