モスチキン

 10代最後のクリスマス。 自宅から徒歩数秒、最寄りのモスへ「出前」を試みた。 交渉の末、「モスチキン50本単位なら可」と言われ、男6人なら食いきれないこともなかったが、10500円の出費で『モスで出前』伝説を共有する経済力は無かった。 
 
「モスモス? 出前お願いしたいんですけど。」
 友人が話す姿だけで笑えたあのころ。 盗んだバイクで走り出しても前科が付かなかったあの頃に戻りたいと思うが、家裁には二度と行きたくない。  
 
 さて、このモスにてバイトの面接を受けたことがある。 良く言えば自由人、悪く言えばプータロー、いや客観的に見てもプータローか。 友人と毎日釣りをするような生活も、エサ代が底をつきてきたのでフリーターへのステップアップを試み、それを阻んだのがモスだった。 
 
 面接をなめていたのもある。 その数週前、作文一つと話術のみで1000人の候補者からとある職を得ただけに(3日でやめました)、天狗になっていたのは仕方ない。 が、面接で受かったのが老人だったと知ったとき、思わず一人で夜釣りに出かけ、釣ったゴンズイをモスのゴミ箱へ投げ込みました。
 
 今日の昼食、数ヶ月ぶりにモスへ行きました。 「テイクアウトできMOS」の文字に、20回転して微笑んでしまった。 丸くなったというか、自分はもう若くないんだと思いMOSた。